今日は照井壮平写真集『狼煙』の発刊日です。無事に初回納品分の100冊(全500部)が届きましたので、先行予約していただいた方から順番に届けて参ります。残り400冊は今週末の納品を予定しており、書店に並ぶのは少し遅れて来週頃からになりそうです。お待たせしている皆さま、申し訳ありませんがもうしばらくお待ちくださいませ。
先行して、完成した本の写真とともに、印刷や製本の仕様について簡単に紹介したいと思います。
本文
本文は白黒写真ですが、ダブルトーンといって墨とグレーの2色を使って印刷しています。1色で刷るモノクロ印刷に比べて、明るい部分から暗い部分まで綺麗なグラデーションを再現することができます。印刷はサンエムカラーさん。写真集の印刷といえば一番に思い浮かぶほど品質に定評がある会社です。いつか印刷をお願いできたら思っていたのですが、幸運にもご一緒することができました。担当の前川さんは元製版の技術者で、印刷はもちろん製本の知識も豊富で多くを勉強させていただきました。今回は表紙のシルクスクリーン印刷(東美企画さま)と製本(新日本製本さま)も前川さんに手配していただきました。
表紙
表紙は白のシルクスクリーン印刷です。小さい文字や細い線も綺麗に刷っていただき、「NOROSHI」の文字がくっきり浮き出ています。印刷していただいた東美企画さんにお話を聞くと、白インクは黒い紙にくっきり濃く刷るのが難しく、濃く擦れるインクは目詰まりを起こしやすいので細い線を出すのが難しいとのこと。今回は細い線でも濃く擦れる狼煙の表紙に最適なインクを探し出していただき、ギリギリの細さで綺麗に擦れるようにデータも微調整していただいたようでした。職人魂に感激です。
製本
製本はハードカバーですがいわゆる上製本ではなく、コデックス装(本文の束の背がむき出しの製本方式)に厚紙の表紙を貼り付けたスイス装とも呼ばれる製本方法です。本が180度開くので、写真集を机に置いてじっくり鑑賞することができます。今回は見返しにあたる部分と1ページ目に渡って写真を配置していたので、イメージが分断されないように、写真のグレーに合わせて本文の背の部分にも印刷加工を行っていただきました。前例が無いのでどうなるか・・とチャレンジングな部分でしたが、予想を超えた仕上がりにまたまた感激です。コデックス装は本来は隠れるはずの背の部分が見えているので、ともすれば作りかけの中途半端な状態(人間で言うと肌着のような?)の印象も与えますが、背をグレーに印刷したことで無骨ながらもシャキっとした印象になり、『狼煙』らしい怪しい雰囲気も醸し出しています。
今回は印刷にも立ち会わせていただき、1冊の本ができるのは様々な技術をもった職人さんたちがいてこそだということを改めて実感しました。『狼煙』の制作に協力いただいたプロフェッショナルのみなさまに感謝するとともに、自らも技術、知識、感性ともに高めていかねばと思いました。(硲)