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Reflections on Tsugaru ⑭ 写真集と協業

(文/硲勇)

デザインとアートの違いというのはよく語られるテーマだが、個人的にはいかに解釈の余地があるかというのが大きな違いのひとつだと思う。デザインはコミュニケーションの成立が大前提なので作り手が狙った通り受け手が解釈するように設計するが、アートは作者の意図、評論家の解釈、鑑賞者の感情、どれもが正解になりえる。

写真集というのはアーティストにとって一次表現の場所になるめずらしい本のジャンルだと思う。(たとえば油絵ではタブローという一次表現があって、画集はそれを複製した二次メディアになる)写真集は単なる写真を集めた複製物ではなく、構成や造本も含めて表現になりえる。そう考えると、写真集のデザインというのは、デザイナーにとってのデザインでもあって、写真家にとってのアートの一部でもある。そういう意味では、狙った通り理解されるだけの予定調和ではつまらないし、ある程度解釈の余地がある方が面白いと思っている。道音舎では、デザインや構成をあれこれ考えて提示するが、最大限作家の意図を尊重する。あれやこれやと議論を交わして、できあがった完成物は最初に想像したデザインとは全く異なることもあるし、作家も予想していなかったものができる場合もあると思う。そういうコラボレーションが写真集を作る魅力だと思う。