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水辺の人

2020.11.29 |

新刊『水辺の人』の予約販売を開始した。道音舎として第3作目となる写真集で、著者の名は松原時夫。1940年生まれの80歳で、11歳でカメラを手にして以来、生まれ育った和歌浦(和歌山県和歌山市)を拠点に撮影を続けている写真家だ。

松原さんは二十歳の頃に大阪の日本写真専門学校(現・日本写真映像専門学校)に進学し、卒業後は同校の教師となった。そして27歳の時、教師をやめて和歌浦の実家に写真店(松原フォトサービス)を開業。いわゆる「町の写真屋さん」としての顔もあり、松原さんに記念写真を撮ってもらった町の人々も多いと思う。

と思う、と書いたのは私も和歌浦に生まれ育ったからで、子どもの頃の私にとって松原さんは、「海でよく会う写真のおっちゃん」だった。夕暮れ時などに堤防に行くと、三脚を立ててじっと沖を見ている松原さんをかなりの頻度で見かけた。夕暮れの海には「何をしているのかわからん近所の人」がうじゃうじゃいた時代だったので、その姿は特に印象的ということもないが、ただなんとなく記憶に残っている。

それから40年以上たって、松原さんの写真集をつくることになった。松原さんの作品に惚れこんで、お願いをして、つくらせてもらうことになった。膨大で多様な作品群から、3つのテーマを選んで3部作として展開していく予定だ。

出版の承諾を得てから、私と硲さんは和歌浦にある松原さんのお宅をたびたび訪ねているが、松原さんの飄々とした人柄に惹かれていくし、その作品にも生き方にも刺激を受けている。

「ああいう人に、なりたいね」
そう話しながら、並んで歩けないほどの狭い路地を歩いて帰路につく。

下の写真は、硲さんと別れてから私が撮った和歌浦の海だ。2020年秋の、水辺の人です。