こんにちは、ユイです!
今週末のKG+ Photobook Fair 2023 への参加を楽しみに過ごしている今日この頃です。
2023年4月に発刊されたイタリアのアート系雑誌 『The Light Observer』 の6号で、松原時夫写真集 『砂のキャンバス』 を10pにわたり紹介していただきました。
今回のThe Light Observer は表紙のカッコ良さに、私も思わずポチりとしました。
およそ2週間ほどで、はるばるミラノから和歌山まで海越え野を越えてやってきてくれましたよ。
写真のイメージやアーティストによって紙の質を変えているなど、とにかく毎号こだわりの詰まった素敵なマガジンです。
今回の掲載記事に関しては、写真専門のライターが執筆してくれたとのこと。
さすがに読み応えがあり、松原さんの地元・和歌浦ではこの度も大いに盛り上がっているようです!
マガジンの購入はThe Light ObserverのWebサイトから可能です。
日本語訳を一部、以下に紹介いたします。
「砂のキャンバス」は、一見すると裸婦を描いたスケッチや絵画のシリーズに見える。これなんかは、後ろから見た身体がわずかに回転し、まるで踊っているかのようなシルエットが見て取れる。おそらく鑑賞者のほとんどが、この見解に同意してくれるだろう。実際のところ、松原時夫は驚くべき離れ技でこの偉業を達成している。私たちは、キャンバスに描かれた裸体を見てとったと喜んでいるが、実際にはこれはキャンバスの上の絵画ではなく、写真家が砂の動きを捉えたものなのである。
日本の写真家・松原時夫は長い間、ほぼ毎日自宅近くの和歌山県和歌浦町の海岸を訪れている。ある日、彼は風と波が砂の上に作り出す面白い形に心を奪われた。それ以来、彼は毎朝カメラを持って和歌浦に通い、偶然が作り出す姿を撮影するようになった。それは、よく知られた「イメージ・ア・ラ・ソヴェット」(意訳. *決定的な瞬間の撮影)ではなく、砂の上に奇跡的に描かれる線を観察し、待つことに専念する時間であった。彼は何度も何度も撮影を繰り返し、時にはその要素が形として認識されることもあった。しかし、彼が瞬間性を求めていないことは明らかである。松原時夫は、形と光の戯れを作り出すもの ーレリーフ、コントラスト、太陽、影、貝の有無、水の流れ、時には鳥などもー による、正確な視点の探求を好む。
彼の写真の撮り方は、子供の頃の海辺での遊びの体験に似ている。海が城を消してくれるのを待ったり、石を投げて水面に光の輪が繰り返しできるのを見たり。そうすることで、色や物質、時の流れ、諸行無常など、あらゆる自然現象を眩しい目で見ている鑑賞者の衝動的な感覚を共有することができる。松原時夫は、さも私たちに新しい視線を投げかけているようだ。私たちが時間をかけてプレイしようとする限り、ゲームはまだ自分たちに関連性を持ちうることを彼は証明しているのである。
さてこのイメージが何を表しているのか、私たちの誤解(裸婦、と最初に話した)に話を戻そう。それが本物ではないとわかっているのに、なぜ人影を感じるのだろう?という疑問が鑑賞者に残る。写真家は、表現と戯れることで鑑賞者たちの期待を裏切り、彼らの想像力を開花させ、表現との関係を覆す。彼の芸術的実践は、写真と絵画のメディア間の緊張に深く動かされているものであり、彼は有名な「写真の後」を「絵画の後」に反転させ、モデルのスケッチのような白黒のイメージによって、見る者を混乱させる。鑑賞者は、擦られたり傷つけられたりして消された絵画を思い浮かべることさえできてしまう。松原時男の前では、写真と現実の関係は解明され、それらは客観性をなくしていく。カメラはしばしば撮影者を消してしまう傾向があるが、松原時男は主観を前面に出し、砂上に光が描いた詩的で官能的な線でもって楽しげに遊ぶのである。
松原時夫「砂のキャンバス」の購入はこちらから。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(ユイ)